人口減少・低潜在成長率という構造課題を抱える本邦において、本邦の上場企業はたゆまない費用効率化、海外成長機会の獲得等の創意工夫を続け、その結果、日本企業の業績は先進国上位の成長を遂げ、株価上昇を演出してまいりました。
加えて、昨今のPBR改革、ガバナンス・コード改善、機関投資家のスチュワードシップ強化の連鎖により、日本市場のクレジビリティは劇的に改善しつつあります。これは、すべての上場企業経営者の不断の努力の総体としての成果であり、私たちはそこに深い敬意と憧憬の念を持っています。
一方で、市場ごとに異なる課題が一部残されているとも感じております。
スタンダード市場の一部では、成長投資・株主還元・開示・資本効率などに関する経営上の課題が、依然として残されているケースもあると私たちは感じています。海外進出や新規事業への挑戦、設備投資と株主還元の合理的な配分とその説明、それが難しい場合の合従連衡・グループジョイン・非公開化を含めた選択肢の検討 — そこには会社としてどうあるべきかを真の意味で考えた経営判断が問われる場面もあるのではないか、と私たちは受け止めております。
グロース市場では、上場前のVCの手厚い支援を失い、上場後の株主を選べない状況への対応に苦戦するケースも目立ちます。意欲的すぎともいえる計画だけではなく、精緻で現実的な予実管理と目標達成力、そしてその継続性が求められる段階にきていると、私たちは考えております。取引所上場基準改定に端を発する「上場100億円問題」は多少の荒療治であるものの、グロース市場を社会のインフラとしてより信頼性のあるものに高めるためには必要な施策だと、私たちは考えております。
また、プライム市場の大企業においても、社会全体の効率性追求や事業ポートフォリオの見直しといった経営課題と向き合い、内外に示していくことが、日本経済全体の活力を高める観点から重要になってきていると感じる場面もございます。
日本企業の再評価、上場市場全体の盛り上がりといった素晴らしいムーブメントを継続発展させ、プライムからスタンダード・グロース市場へと波及させ続けるためには、発行体と投資家の対話の質が、これまでになく肝要になると私たちは考えます。
私どもが主な投資対象とさせていただく中小型株は、市場区分を問わず、国内売上比率が相対的に高く、交渉力や組織力も発展段階にあるため、成長の伸びしろを確保しづらい面があります。企業価値を業績と期待値(マルチプル)の積で表した場合、第一に目指すべきは稼ぐ力(業績)の向上への集中ですが、次に肝要なのが投資家との接点、すなわち投資家との対話を通じた適切な企業価値理解の形成です。期待値は高ければよいわけではありませんが、適切な高さは、市場への良いシグナル、ビジネスへの好循環、資金調達の容易化による競合優位性の獲得、という好循環を生みます。中期経営計画、成長可能性、キャピタルアロケーション方針、ESG経営の方針とデータをより具体的に語っていただけるほど、投資家は将来像を描きやすくなります。
そして投資家・投資運用業者側もまた、単なる一事業者にすぎません。その役割上、発行体の皆様に意見を申し上げる機会も多くございますが、私たち自身もまだ未成熟であり、研鑽を積むべき立場であることを忘れてはなりません。私どももその一員として自らを律してまいります。また今後、弊社ステークホルダーへの影響を鑑み段階的にとはなりますが、当社自身のより多くの開示を試みてまいる所存です。ビジネスを知らない立場で無為な意見や要請をすれば発行体を混乱させることを理解しつつも、できるだけ役に立つ提言や情報を持ち寄り、ギブアンドテイクの関係を築くことが本来あるべき対話の姿です。私たちをご活用いただけますと幸いです。
中小型株を中心に汗をかいて調査・投資を行う私どもの上場株運用戦略は、機関投資家として発行体を後押しし、売買を通じて流動性を提供することで、その後の大手機関投資家への橋渡し役となることを志しております。また、法人関係情報を適切に管理しながら、一部の事業会社の皆様に対しては、アドバイザリーやCVC運営支援、投資案件の相互紹介などを行わせていただく場合もございます。
長く深く対話のできるパートナーとして、皆様の企業価値向上のお役に立ちたいと願っております。